母が退院してから寝たきりになるまでは、およそ1カ月。
その寝たきりの母が使っていたのは、介護保険でレンタルした介護ベッド。
実際に介護をしている方や介護職として働いてる方は、
「急に始まったにしては介護ベッドが入るのが早すぎないか?」
と感じたと思う。そう、早すぎる。
実は母には、寝たきりになるずっと前から、すでにケアマネジャーがついていたのだ。
ということで、いままさに両親がお世話になっている介護保険制度について整理してみる。
介護保険で使えるサービス
母はかなり前から背中が曲がっていた。どうやら痺れもあったらしい。
そのため整形外科に通っていた。
そのかかりつけの整形外科の先生のすすめで、介護認定を受けて、
ケアマネジャーについてもらい、要支援1の介護保険サービスを使っていたようだ。
介護保険サービスは、65歳以上であれば、要介護認定を受けることで介護保険サービスを利用できるという制度で、来るべき日に備え、私も40歳からしっかり介護保険料を納めさせられている。
介護保険料を納め始めた頃は何だかピンと来なかったけど、いざ両親の介護が始まってみると、
なかなかありがたい制度だって実感している。
介護保険の区分を整理するとこんな感じ。
要介護・要支援の区分と使えるサービス
介護保険で利用できるサービスは、認定された「区分」によって変わる。
訪問介護(生活援助)・デイサービス・福祉用具貸与(一部)など
要支援1より幅広く利用可。訪問リハビリ・福祉用具貸与なども対象。
訪問介護・デイサービス・ショートステイ・福祉用具貸与など
要介護1と同様+福祉用具の種類が広がる。住宅改修費も利用可。
特別養護老人ホーム(特養)への入居申請が可能になる。夜間対応型サービスも利用しやすくなる。
施設入居・医療連携が重要に。訪問看護・定期巡回サービスの活用も。
全サービスが利用可。施設への入居が事実上必要なケースが多い。
※ 支給限度額を超えた利用は全額自己負担。
※ 「要支援」は「総合事業」の対象にもなる。
ざっくり言うと、たとえば要支援1で1割負担なら、50,000円くらいまでの必要なサービスを
自己負担5,000円くらいで利用できるっていう、とっても助かる制度なのだ。
介護保険サービスを自宅で利用するためには、ケアプランの作成をする必要がある。
このケアプランを、本人や家族の希望を聞きながらプロ目線で作成してくれるのが、
ケアマネジャー(介護支援専門員)、略して、ケアマネだ。
ケアマネは「介護のプロデューサー」
ケアマネの役割を一言で表すなら、私は「介護生活のプロデューサー」だなって思う。
映画作りにプロデューサーがいるように、介護にもプロデューサーがいる。
どんな介護サービスが必要か、どこに依頼するか、費用はどうなるか
そういったことを全部まとめてコーディネートしてくれるケアマネさんだ。
まず、ケアプランを作成してくれる。
ケアプランっていうのは、簡単に言うと、介護サービスの利用計画書だ。
家族の希望を聞いた上で、プロ目線でその人の状態に合わせて
必要なサービスを組み込んで作ってもらう。
「ではデイサービスの利用は週2回しましょう、訪問看護は月2回必要ですね」
みたいに組んでくれて、その場合の自己負担額も教えてくれる。
ちなみに、このケアプランの作成そのものは無料。費用は介護保険が全額負担してくれてるのだ。
そして、作成したケアプランに基づいて、デイサービスや訪問介護など、
実際に使うサービスの事業所を探して、手配をしてくれるのも、ケアマネさんだ。
実際のり母の在宅介護の時は、デイサービス、ショートステイ、訪問診療、訪問介護、
歯医者さんの訪問診療、介護ベッドを変えてもらったりと、いろいろ相談に乗ってもらった。
(介護保険対象外だけど、訪問美容(カット)も紹介してもらった)
状態が変わったとかこんなサービスを追加したい、って時は、ケアマネに相談すると、
その都度、ケアプランの内容を見直してくれる。もちろん無料で。
ケアマネジャーが担う4つの役割
| 役割 | 具体的な内容 | 詳細 |
|---|---|---|
設計ケアプランの 作成 |
本人・家族との面談で 生活課題を整理 |
本人・家族との面談をもとに生活課題を整理。必要なサービスの種類と量を組み合わせたケアプラン(計画書)を作成する。作成費用は無料(介護保険が全額負担)。 |
調整多職種との 連携 |
関係者全員を つなぐ連絡役 |
医師・訪問看護師・ヘルパー・福祉用具事業者など、関係者全員をつなぐ連絡役。サービス担当者会議を主催し、情報を共有・調整する。 |
管理給付管理・ モニタリング |
月1回以上の 訪問で状態確認 |
介護保険の支給限度額を管理しながら、月1回以上の訪問でプランが実態に合っているかを確認・記録する。状況に応じてプランを随時見直す。 |
橋渡し相談・社会 資源の紹介 |
制度の壁を越えた サポート |
介護保険外のサービス(地域の見守り活動・家族会など)の情報も提供。制度の壁を越えたサポートで、生活全体を支える。 |
ケアマネにも種類がある?!
母には、寝たきりになるずっと前から、すでにケアマネがついていた。
だから私は知らなかったけれど、本当は《要支援》と《要介護》では、
ケアプラン作成を担当するケアマネさんが違うらしい。
原則、《要支援》1・2の人のケアプランを担当するのは、
地域包括支援センターの職員の方。
主任ケアマネや社会福祉士などの資格を持っている方が対応してくれる。
地域包括支援センターは、市区町村が設置している介護相談の入り口だ。
一方、《要介護》1〜5の人の在宅介護のケアプランを担当するのは、
居宅介護支援事業所のケアマネになる。
この居宅介護支援事業所っていうのは、民間の事業所なので自分で選んで契約する。
「選んで、って言われても心当たりがないし…」って時は、地域包括支援センターに
紹介をお願いしてもいいし、かかりつけ医に紹介してもらうという手もあると思う。
実際、母には、かかりつけの整形外科の紹介で、
最初から居宅介護支援事業所のケアマネがついていた。
居宅介護支援事業所のケアマネだったからこそ、いきなり介護度が爆上がりした母に、
さっくり介護ベッドを入れることができたんだろうと思う。
そして母は、いま老人保健施設っていう介護施設に入所してもらっているので、
居宅介護支援事業所のケアマネから、いま入所している老人保健施設のケアマネに変更になった。
置かれている状況によって、担当してもらうケアマネも違ってくるんだってことを、
私は初めて知った。
ケアマネ選びは「相性」が大切
ケアマネは「介護生活のプロデューサー」
だから、ケアマネとの相性は介護の質に直結する。
介護は長期戦だから、親の介護状況や家族の事情をよく理解してくれて、連絡が取りやすくて、
プロ目線で適切なアドバイスをしてくれる
そんな相性の良いケアマネに出会えたら、介護家族の負担はグッと減る。
ケアマネは、自分で選ぶことができるし、合わなければ変更することもできるのだ。
ネットでは、ケアマネを選ぶ時に確認するポイントは
▪️こちらの話をきちんと聞いてくれるか
▪️連絡への反応が早いか
▪️担当している利用者の数が多すぎないか(目安は35人以下らしい)
といったことが挙げられている。
いくつかの事業所に話を聞いて、複数のケアマネに会ってみて、
「この人なら話しやすそう」と思える人を選ぶのが理想らしい。私もそう思う。
で、私の経験から導き出した「相性の良いケアマネを見つけるコツ」はというと…
——んなものがあるなら、私が教えて欲しい。というのが率直な感想だ。
正直に言えば、私と居宅ケアマネさんとの相性はあまり良くなかった。
話せば聞いてはくれるし、連絡への反応も遅くはない、いい人だというのも伝わってくる。
だけど、なんだか言葉のチョイスが微妙で、説明をすっ飛ばしてしまうことがあるので、
イライラすることがあった。
これが「相性」っていうことなんだろうな、って私は思う。
私は長らく接客業をしていたから、個人客相手の仕事の大変さは身に沁みている。
だから私がサービスを受ける側でも、多少のことでは腹が立つことがなかった。
なのに介護となると自分でも驚くくらいイライラした。
介護ど素人で右も左もわからない、何をどうしていいのかわからない迷いと焦りで
気持ちの余裕を失って、ちょっとしたことでもカチンと来てしまうのだ。
とうとう「ケアマネを変えたい」と、地域包括支援センターに相談に行ったこともあった。
けれど私は結局、居宅ケアマネを変えることはできなかった。
その居宅ケアマネさんは、長いこと母を担当していて我が家の事情をよく知っている。
すでに母は寝たきりになってる。今のケアマネさんだっていい人ではある。
いまから、私が「より良い」と思える新しいケアマネさんを探すことが正しいことなのか、
自信がない。そしてなにより、そんな余力が私には残されていなかった。
ケアマネさんを変えられないなら、私が変わるしかない。
私は意識を変えて乗り切ることにした。
具体的に言うと「お仕事スイッチ」を入れて、ケアマネさんに対応することにしたのだ。
例えば、質問するときは
▪️責めるような聞き方にならないよう、言葉を選ぶ
▪️相手にもイメージしやすいよう、こちらから仮説を出す
▪️「つまり〜ということでしょうか?」と言い換えて確認する
▪️YesかNoで答えられる質問で、少しずつ絞り込んでいく
などなどを心がけた。
「私は介護中なんだから、もうちょっと気を利かせて欲しい」っていう
察してチャンな気持ちを捨てたら、少し楽になった気がする。
——「相性の良い」とは思えなかったけど。
もちろん相性の良いケアマネさんに出会えるのが、いちばんいい。
相性の良いケアマネを並行して探し続ける、というのもアリだろう。
介護は、なにごとも余裕を持って早めに動いた方がいい、と言うのが私の実感だ。
困ったらまず地域包括支援センターへ
介護においては、まず地域包括支援センターとつながりを作っておくっていうのが、
最初の一歩だと思う。
地域包括支援センターは、市区町村ごとに必ず設置されている介護全般の相談窓口で、
介護認定を受けていない段階から、気軽に相談できるので、ちょっと気になることがある、
くらいの段階で一度、相談に行っておくと、今後何かあった時に相談しやすくなるはずだ。
インターネットで「○○市 地域包括支援センター」と検索すれば、
そのエリアを担当している地域包括支援センターを見つけることができる。
なお、探すときの「○○市」は自分が住んでるところじゃなくて、
介護が必要になるであろう人——我が家ならのり父とのり母が住んでいる市区町村を入れること。
介護を担うのは各市町村だからだ。
とにかく頼れるプロ達を早めに味方につけて、たくさんの人達に少しずつ助けてもらおう。
介護は、自分ひとりで頑張ってなんとかできるものじゃないからだ。
例えるなら、人ひとりを背負って歩くのと同じ。
「私が頑張れば、私が我慢すれば」と思うと、大概の人は潰れてしまう。
「自立とは依存先を増やすこと」(小児科医・熊谷晋一郎氏)
たくさんの味方に少しずつ頼ることが、長い介護迷宮を歩き続けるコツなのだから。